銅合金鋳造における鉛の影響を解説
この記事では次の内容をまとめています。
・銅合金鋳造における鉛の役割
・鉛が含まれる銅合金の主な種類
・銅合金鋳造で鉛を使う問題点
銅合金鋳造を依頼しようと考えているが、鉛の扱いについて気になっている方が知っておくべきことを全てまとめました。
銅合金鋳造とは
銅合金鋳造とはその名の通り、銅合金を用いて鋳造を行うことです。
銅合金とは銅に他の金属や非金属などを混ぜた化合物のことを指します。
混ぜるものによって銅合金の特性は変わり、様々な種類の銅合金が鋳造に使われています。
銅合金には鉛が含まれているものもいくつかあります。
銅合金鋳造における鉛の役割2つ
この章では鉛が銅合金鋳造に用いられる理由をご紹介します。
快削性が増す
鉛の特徴の1つが快削性に優れていることです。
切削加工がしやすくなり、加工にかかる時間を短くすることができます。
また、それにより製造コストが下がるというメリットもあります。
鋳造性が増す
鋳造性が高くなる特性も持っています。
鋳造は古くから行われてきた歴史ある金属加工方法ですが、不良品が発生しやすいというデメリットがあります。
鋳造性が高い金属を使えば、不良が発生する確率を減らすことができ、生産効率が上がります。
また、作り直しにより必要となるコストも削減できます。
鉛が含まれる銅合金の主な種類
この章では鉛が含まれる主な銅合金について解説します。
快削黄銅
黄銅の種類の1つです。
黄銅とは銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)と呼ばれることもあります。
これに鉛を加え、快削性を高めたものが快削黄銅と呼ばれま、切削加工によく使われます。
切削の際に発生する切り屑が微細なのも特徴の1つです。
ちなみに、銅、亜鉛、鉛などの含まれる割合によって快削黄銅はさらに細かい種類に分けられます。
鍛造用黄銅
熱間鍛造に特に向いている黄銅です。
記号ではC3712(鍛造用黄銅棒1種)、C3771(鍛造用黄銅棒2種)などと表されます。
鍛造用黄銅は被削性にも優れています。
高圧バルブ、機械部品によく使われます。
鉛青銅
青銅は銅とスズの合金です。奈良の大仏や10円玉は青銅でできています。
青銅は展延性や強度が高いのが特徴です。
鉛青銅は鉛を多く含んだ青銅で、CAC602、CAC603、CAC604、CAC605といった種類があります。
鉛の含有率がそれぞれ異なり、性質も微妙に異なります。
摺動部品や軸受材料としてよく使われます。
砲金
金という言葉がついていますが、青銅の一種です。
鋳造性が高く、耐摩耗性、耐海水性に優れているのが特徴です。
かつて大砲に使われていたことから、このような名前となっているようです。
現在では水道メーター、バルブ、船舶部品などに使われています。
銅合金鋳造で鉛を使う問題点3つ
この章では銅合金鋳造で鉛を使うと生じる問題点をご紹介します。
健康問題を引き起こす恐れがある
鉛は昔から長く使われてきましたが、近年、健康に影響を及ぼすことが問題視されています。
具体的には多量に摂取すると神経系の障害や頭痛といったあらゆる症状が出ると言われています。
ヒトの場合、鉛は吸入と経口摂取により吸収されます。
そのため、銅合金に鉛を使う際、人体に影響を及ぼさないよう量を調節したり、鉛に対する処理をしたりといった対策が求められます。
環境問題を引き起こす恐れがある
鉛は環境を汚染する原因にもなります。
例えば、鉛を含む製品が埋め立てられると、土壌が汚染されたり、鉛が地下水に入ったりすることが考えられます。
また、その土地で育てた食べ物を食べたり、鉛で汚染された地下水を飲んだりすることで、健康被害にも繋がります。
こうした背景から、そもそも鉛を多く使った製品を製造しないようにしようという動きがあります。
鉛の規制がある
これまで述べてきたように、鉛は健康被害や環境汚染を引き起こすことから、規制が厳しくなっています。
代表的なのはRoHS指令(ローズ指令)です。
これはEUによって定められた特定の有害物質の使用制限に関する指令で、鉛も規制されています。
銅合金鋳造で鉛を使う場合はこうした規制を守る必要があります。
万が一、基準値を超えると、市場に流通させることはできません。
流通した製品が違反していることが判明した場合は罰則を受けたり、企業の信用が下がることが考えられます。
銅合金鋳造における鉛の問題点を解決する方法2つ
この章では銅合金鋳造における鉛の規制をクリアするためにできることをご紹介します。
鉛レス素材を使う
まず、鉛の代わりに鉛レス素材を使うという方法があります。
鉛レス素材とは鉛フリーの素材でありながら鉛と似たような性質を持つ金属のことです。
例えば、CAC900系統のビスマス青銅鋳物が挙げられます。
これは鉛を使わない青銅を求める過程で生まれたもので、まだまだ歴史は浅いです。
NPb処理を行う
これは水栓や水道メーターなど、給水器具からの鉛の浸出を低減させるための技術です。
具体的には専用の液につけることで、製品の表面の鉛を除去します。
水道器具によく使われる銅合金には鉛が添加されているケースが多いです。
何も対策をせずにそのまま使用すると鉛が水に浸出し、健康被害を引き起こす恐れがあります。
NPb処理により、水と触れる面の鉛を除去すればこうした事態を防げます。
ただし、銅合金から鉛を取り除くことで金属の性質が変わる恐れがあるのがデメリットです。
銅合金鋳造で鉛対策を行うときのポイント3つ
この章では銅合金鋳造において鉛対策を行うときのポイントをご紹介します。
業者が鉛レス素材に対応しているか確かめる
鉛レス素材を使うことで鉛対策をしたい場合、銅合金鋳造を行なっている業者が素材に対応しているかどうかを確かめましょう。
なぜなら、扱っている銅合金の種類は業者によって異なるからです。
しかも、鉛レス素材は比較的新しい金属のため、扱っていない会社も少なくないからです。
直接業者に問い合わせたり、ホームページを確認したりして、鉛レス素材を扱っているかを確かめましょう。
業者の実績を見る
業者の実績を確認するのも大切です。
ホームページに具体的な依頼例や、お客様の声が載っていないか確認してみましょう。
実績がたくさん掲載されていると信頼性が高いのはもちろんのこと、自分達が依頼する際の参考にもなります。
業者の検査体制を見る
銅合金鋳造で鉛対策をするなら検査体制は非常に重要です。
なぜなら、鉛が含まれる製品は規制によって定められた数値をクリアしていなければ流通させることができないからです。
検査が適当だと、基準値をクリアしていない製品が出回り、重大な問題に発展することも考えられます。
そこで、検査体制が整っている会社を選びましょう。
弊社の銅合金鋳造における鉛への対応
弊社では鉛レス素材(CAC901、CAC902)に対応しています。
鉛レス素材を使用した銅合金鋳造をお考えの方はぜひお気軽にお問合せください。
まとめ
鉛は快削性や鋳造性に優れており、銅合金に鉛が添加されるケースはよくあります。
しかし、近年は鉛が人体や環境に悪影響をもたらすことが分かってきたため、鉛の使用を制限する動きが広まっており、日本にも鉛に関する規制があります。
銅合金鋳造において鉛対策をするなら、
鉛の代わりに鉛と似たような性質を持つ鉛レス素材を用いる
NPb処理をして製品の表面の鉛を取り除く
このような方法があります。
まずは銅合金鋳造を行なっている会社に問い合わせをしてみましょう。
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