特殊用途で活躍する銅合金鋳造 – EV車・海洋・航空宇宙・医療分野での事例をご紹介

この記事では次の内容をまとめています。
・銅合金鋳造とは
・特殊用途で求められる材料の特性
・特殊用途における銅合金鋳物の使用用途
特殊用途で使用される部品に銅合金鋳物が使えるか気になる方が知っておくべきことを全てまとめました。
銅合金鋳造とは
銅合金とは銅を主成分とした合金のこと。黄銅、青銅、白銅など様々な種類があります。
銅合金鋳造では溶かして液体状にした銅合金を型に流し込んで成形します。
銅合金鋳造によって作られたものは銅合金鋳物と呼ばれます。
銅合金鋳物は銅と同じような性質を持ちますが、一緒に配合される他の金属や非金属の影響も受けるため、種類によって細かい特徴は異なります。
EV車の材料に求められる特性3つ
この章ではEV車に使用する部品に求められる特性をご紹介します。
導電性
EVは言い換えると電気自動車。
つまり、導電性は非常に重要です。
大電流・高電圧に耐えられる部品が求められます。
銅は導電性が高いという特徴があり、EV車の材料としてはぴったりです。
銀は銅よりも導電性が高い金属ですが、高価なので電気に関わる部品にはよく銅が使われています。
ちなみに、EV車は従来の車よりも多くの銅を必要とします。
加工性
EV車は数え切れないほどの部品でできています。
ニーズに合う部品を作るためには材料に加工性の高さが求められます。
例えば切削加工がしやすい素材なら、細かい部分まで形を調整することができるので、複雑な形状の部品にも対応できます。
銅合金の中には鍛造性や鋳造性に優れるもの、被削性が高いものもあり、様々な加工方法に対応できます。
耐摩耗性
EV車の部品には例えばブレーキのように金属同士が接触するものや、高速で回転するものがあるため、耐摩耗性に優れている素材が選ばれます。
もし摩耗しやすい素材を使うと、性能が低下したり、故障したり、部品の交換頻度が高くなったりと様々な問題が生じます。
EV車における銅合金鋳物の使用用途4つ
この章ではEV車関連で銅合金鋳物が使われる例をご紹介します。
端子
自動車用の端子にはよく銅合金が使われます。
導電率の高さや強度が求められるためです。
特にEV車は高電流に耐えられる端子が必要で、銅合金が持つ性質との相性はとても良いです。
バスバー
銅合金鋳物はバスバーにも使われます。
バスバーとはバッテリーから複数の出力へ電流を分配するもの。
大電流が通るところなので、銅がよく使用されます。
ワイヤー
電気自動車の中には血管のようにワイヤーが張り巡らされています。
様々な電子機器を動かすために不可欠なもので、導電性の高い銅合金が使われます。
ちなみに、町中を通っている電線も銅でできていることが多いです。
充電器
EV車の充電器の部品にも銅合金が使われています。
ちなみに、急速充電器は通常の充電器よりも流れる電流の量が多く、より太い銅製の部品が必要となり、それにより使用する銅の量も増えます。
海洋設備の材料に求められる特性2つ
この章では海洋設備に使われる部品に求められる特性をご紹介します。
耐海水性
海洋設備には耐海水性の高さが求められます。
耐海水性が高いとは海水に触れた際の腐食に対する耐久性が高いということ。
海洋設備は海にずっと浸かっていたり、海水に触れることが多いからこそ、そういった環境下でも安全に使い続けられる素材を使用します。
耐海水性が高い銅合金としてはアルミニウム青銅やネーバル黄銅があります。
耐食性
耐海水性だけでなく、耐食性も大事です。
耐食性とは簡単に言えば「錆びやすいかどうか」。
海洋設備は頻繁にメンテナンスをしたり、部品を交換したりするのが難しい環境にあります。
そのため、錆びずに長持ちする素材が求められます。
海洋設備における銅合金鋳物の使用用途4つ
この章では具体的に海洋設備のどんなところで銅合金鋳物が使われているかをご紹介します。
海水配管
耐食性や耐海水性に優れる銅合金は海水を運ぶ管の素材として使われます。
具体的にはエンジンを冷却するための配管や、発電所の冷却システム用の配管に使われています。
海水配管に使われる銅合金の例として銅ニッケル合金があります。
熱交換器
熱伝導性が高く、耐海水性や耐食性にも優れる銅合金は海洋設備に付属する熱交換器によく使われます。
特に適した特性を持つのがアルミニウム青銅です。
銅合金だけでなく、純銅が使われることもあります。
スクリュー
船の下部についているプロペラのようなものです。
これが回転することで船は前に進みます。
スクリューは常に海水と接しているため、海水に強く、強度も高い素材が求められます。
船舶用丸窓
船の丸い窓の周りには金属のフレームがついており、その材料として銅合金が使われることがあります。
代表的なものに銅と亜鉛の合金である黄銅(真鍮)が挙げられます。
航空・宇宙設備の材料に求められる特性2つ
この章では航空・宇宙の分野で使われる部品に求められる性質をご紹介します。
耐熱性
飛行機やロケットの部品には高い耐熱性が不可欠です。
なぜなら過酷な環境下で使われるからです。
例えば、ロケットが発射され、ある程度の高さを超えると、周りの温度はどんどん上昇し始め、1000度を超えます。
この環境に耐えるため、航空・宇宙分野では特殊な合金や耐熱材料が積極的に採用されています。
軽さ
空を飛ぶ乗り物は全体の重量を軽くすることで燃費が良くなります。
さらに、ロケットの場合は打ち上げにかかるコストを減らすことができます。
航空・宇宙設備における銅合金鋳物の使用用途2つ
この章では航空・宇宙設備において銅合金鋳物が使われているところをご紹介します。
ロケットエンジン
エンジンはかなり高温になる部分です。
また、高温になる分、同時に冷却も行うため、耐熱性と同時に熱伝導率の高さが求められ、両方の性質を持つ銅合金が使われます。
軸受
軸受とは回転する部品がスムーズに動くように支える部品です。
軸受は飛行機やロケットの様々な部分に使われており、安全な飛行ができるようにサポートしています。
医療機器・器具の材料に求められる特性2つ
この章では医療分野で使われる道具や設備で採用される素材の特性をご紹介します。
抗菌性
医療の現場では衛生的な環境を保たなくてはいけません。
抗菌作用を持つ道具や設備を採用すれば、病気が院内で広がるリスクを減らせますし、頻繁に消毒や洗浄をする必要がなくなり、生産性も上がります。
導電性と強度の両立
治療や診察のために体内に挿入する器具は、正常に作動させるために導電性が求められます。
その上、曲げても破損しないような強度の高さも必要です。
つまり、導電性の高さと強度の高さが両立している素材が重宝します。
医療分野における銅合金鋳物の使用用途2つ
この章では医療分野において銅合金が使われる場面をご紹介します。
病院設備
手すり、ドアノブ、ベッドの柵など、病院設備のあらゆる部分に銅合金が使われています。
抗菌性に優れた銅合金は医療現場の衛生環境を守っています。
カテーテル
患者の体内に挿入するカテーテルには次のような理由で銅合金が使用されます。
・細くても折れにくい
・導電性が高く、映像を撮ったり、ライトを当てたりすることが可能
・抗菌作用があり、細菌が体内に入るのを防げる
まとめ
銅合金には様々な種類があり、それぞれ異なる特徴を持つため、EV車、海洋設備、航空・宇宙設備、医療分野といろいろなところで欠かせない存在となっています。
新しい銅合金の研究・開発は今も続いており、これからも特殊用途において活用され続けていくでしょう。
ブログ一覧へ