鋳物の表面処理とは?方法・特徴・選び方を総まとめ

この記事では次の内容をまとめています。
・鋳物の表面処理とは
・鋳物に表面処理をする理由
・鋳物の表面処理の種類
鋳物の表面処理を依頼しようと考えている方が知っておくべきことを全てまとめました。
鋳物の表面処理とは
表面処理とは鋳物の表面を加工することです。
目的は機能性を上げること、見た目を綺麗にすることなど、いろいろなものがあります。
表面処理の方法としては研磨や化学処理など、こちらも様々です。
製品の用途や使用環境に応じて最適な処理方法を選択することが大切です。
鋳物に表面処理をする理由4つ
この章では鋳物に表面処理をする理由をご紹介します。
腐食を防止する
錆を防ぐために表面処理が行われるケースは多いです。
空気や水分によって錆が進行すると劣化が早まり、製品の寿命を縮めてしまいます。
そこで、表面処理を施すことで金属の表面をコーティングし、進行を防ぐのです。
このとき、次の2つのタイプの処理方法があります。
・耐食性を高めて錆の発生を防止する
・敢えて表面に錆の膜を作ることで内部まで腐食が進まないようにする
これにより、長期的に安定した品質を維持します。
耐久性を上げる
ショットブラストなどの表面処理を行うと耐久性を高められます。
特に機械部品や自動車部品のような常に負荷がかかる製品の場合、表面処理の有無で使用期間が大きく変わります。
また、メンテナンス頻度が減り、コスト削減に繋がるメリットもあります。
機能性を上げる
製品に新たな機能を付与する役割もあります。
例えば
・耐熱性の向上
・滑りやすくする
・電気を通さなくする
などです。
このように表面処理は鋳物をただ「長持ちさせる」だけでなく「使用環境に応じて使いやすくする」手段でもあるのです。
綺麗な外観にする
表面を滑らかにし、均一で綺麗な外観に仕上げることもできます。
砂型を用いる鋳造では鋳物と砂が接触するため、完成品の表面は砂の跡が残り、凸凹になりやすいです。
こうした課題を解決する方法の1つが表面を磨く処理であり、これにより高級感を出して製品の価値を高められます。
特に建築部材やインテリア部品などの見た目が重要視される用途では、性能だけでなく外観の美しさも求められ、表面処理が行われます。
鋳物の表面処理の種類7つ
この章では鋳物の表面処理の主な種類をご紹介します。
ショットブラスト
ブラスト加工の一種で、粒状の投射材を加工物に吹き付けるものです。
直接、投射材をぶつけることで、製品の表面が固くなり、耐久性や耐摩耗性が高くなります。
また、表面が凸凹になることで、ザラザラのマットな質感になったり、滑りにくくなる効果もあります。
薄肉製品は投射材がぶつかる衝撃で歪む可能性があるため、ショットブラストとの相性はあまり良くありません。
アルマイト処理
硫酸などの水溶液に浸けて通電することによって表面に酸化皮膜を作る処理方法です。
耐食性が高まり、錆の発生や変色を防ぐことができます。
また
・硬度が高まる
・耐摩耗性が高まる
・絶縁性が高くなる
といった効果もあります。
アルミニウムの表面処理によく使われます。
クロメート処理
クロム酸を含む液に浸し、皮膜を作る表面処理方法です。
・腐食を防止する
・耐摩耗性を向上させる
などの効果があります。
また、塗装を行う前に塗料の密着度を高める目的で行われることもあります。
かつては六価クロムを用いた溶液が使われていましたが、これには毒性があり、EUでは使用を制限する規制が出ました。
その影響により、現在は毒性のない三価クロムを用いたクロメート処理のニーズが高まっています。
研磨
鋳物の表面を削り、平滑にする処理方法です。
ざらついた鋳肌を滑らかにし、光沢のある美しい表面に仕上げることができます。
見た目を向上するだけでなく、錆や汚れを防止することもできます。
メッキ
製品とは違う金属で表面に皮膜を作るものです。
ニッケルメッキや亜鉛メッキなど様々な種類があります。
・耐食性の向上
・装飾性の向上
・導電性の向上
など、様々な目的で使われます。
塗装
塗装も表面処理の1つです。
色をつけてデザイン性を出すのはもちろんのこと、表面に膜ができることで耐食性もアップします。
それ以外にも、撥水性や耐摩耗性など、機能性を付与することもできます。
塗料をしっかりと密着させるために、塗装の前にショットブラストで加工することもあります。
鏡面加工
その名前の通り、まるで鏡のようなピカピカの見た目に仕上げるものです。
精密切削加工や精密研削加工によって行われます。
鋳物の表面には光沢が出て、高級感を演出することができます。
鏡面加工は平滑性を高めたいときにもおすすめです。
一方で、指紋などの汚れが目立ちやすいというデメリットがあります。
鋳物の表面処理の選び方3つ
この章では鋳物の表面処理方法を選ぶときに見るべきポイントをご紹介します。
製品の用途
まず考えるべきは製品の用途です。
なぜなら、処理方法によって追加される性質は異なるからです。
例えば、屋外で使用する部品なら耐食性を高める表面処理を選ぶべきです。
また、機械部品なら耐摩耗性を強化できる処理方法が合っています。
適切な処理を見極めるためにも各方法の特徴を知っておくことは大切です。
求める見た目
製品に求める見た目も表面処理方法を選ぶポイントになります。
例えば、高級感を演出したい場合、光沢のある見た目になる鏡面加工はぴったりです。
一方で、ザラザラした質感を求める場合はショットブラストが有効です。
カラーリングを重視する場合には、アルマイト処理や塗装を選びましょう。
コスト
表面処理の種類によって費用は異なります。
例えば、ショットブラストは比較的安価で、大量生産品に適しています。
一方で、鏡面加工のような手間がかかるものはコストが高くなる傾向があります。
必要な性能や外観とのバランスを考慮しつつ、コストに見合った処理方法を選ぶことが大切です。
鋳物の表面処理を依頼するときの注意点3つ
この章では鋳物の表面処理を業者に依頼する際に注意すべきポイントをご紹介します。
出来るだけ一社に一貫して依頼する
鋳造から表面処理まで一社に依頼することができると、コスト削減になりますし、納期も短縮できます。
反対に、工程によって別の会社に依頼する場合、
・各会社で打ち合わせをしなければいけない
・それぞれの会社へ製品を送らなければいけない
このような理由からコストも時間もかかります。
表面処理の仕上がりは鋳物の質に左右される
表面処理の方法によっては、鋳物の状態に仕上がりが左右されることがあります。
例えば、メッキを行う場合、鋳物の表面が凸凹だと処理後の表面も凸凹した状態になります。
表面処理のための下処理が必要なことも
表面処理を行うためにさらに下処理が必要なケースもあります。
例えば、塗装を行う前はショットブラストで表面に凸凹を作ることで塗料が密着しやすくします。
そのため、表面処理自体のコスト以外もかかることがあるので注意が必要です。
まとめ
表面処理とは鋳造が終わった製品の表面に加工をすることで、機能性を高めたり、見た目を良くしたりすることです。
アルマイト処理や研磨など、表面処理の方法はいろいろあり、それぞれメリット・デメリットも異なるため、用途や使用環境など、条件によって適切なものを選ぶ必要があります。
どれが最適か、そもそも表面処理が必要なのか分からないという場合は業者に相談してみましょう。
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