アルミ切削加工の材料・メリット・難しい理由を徹底解説

この記事では次の内容をまとめています。
・アルミニウムの切削加工とは?
・アルミニウムの特徴
・アルミ切削加工の材料の種類
アルミニウムの加工方法について悩んでいる方が知っておくべきことを全てまとめました。
アルミニウムの切削加工とは?
切削加工では旋盤やフライス盤などの機械を用いて素材を削りながら加工します。
金属の加工方法は鋳造を始めとして様々なものがありますが、アルミは柔らかい金属なので、切削加工がよく使われます。
ちなみに切削加工では削るだけでなく穴を開けることもできます。
寸法通りに仕上げるには刃物やスピードを適切に選ばなくてはいけません。
アルミニウムの特徴6つ
この章ではアルミニウムの特徴をご紹介します。
軽い
まず、アルミは軽い金属です。
鉄や銅に比べると重さは3分の1程度です。
一円玉の素材はアルミで、とても軽いですよね。
そのため、軽量化を求める際にアルミはよく選ばれます。
加工しやすい
アルミは加工しやすいのも特徴で、切削加工だけでなく、力を加えることで変形させる塑性加工など、様々な方法を用いて加工されます。
そのため、再現できる形状の幅は広く、色々な用途で使われています。
熱伝導性が高い
アルミは熱しやすく、冷めやすいのも特徴です。
熱伝導率は鉄の3倍ほど。
そのため、熱交換器、ヒートシンク、放熱フィンによく使用されます。
磁気を持たない
アルミは非磁性のため、磁気の影響を避けたい環境で多く使用されます。
例えば、一部の医療機器はアルミニウムを使用することで安全性を確保しています。
耐食性が高い
表面に酸化皮膜ができることで腐食が進みにくくなるという特徴があります。
そのため、建築部品や船舶部品など、水や海水に晒される環境で使われるものにアルミニウムは用いられています。
ちなみに、より耐食性を高めるために、仕上げとして表面処理を行うこともあります。
毒性がほとんどない
アルミニウムは人体に対して毒性がほとんどない安全な金属です。
そのため、缶、調理器具、食品の包装など、直接体内に入れるものに触れるものにもアルミは使われます。
毒性のある素材を使用すると健康問題や環境問題を引き起こすこともあるため、何を選ぶかは非常に重要です。
アルミ切削加工の材料の種類
この章ではアルミニウムの種類をご紹介します。
1000番台
純度が99%以上のアルミニウムです。
1000番台だけは合金ではなく、純アルミニウムです。
導電性、熱伝導性、耐食性に優れているものの、強度はあまり高くありません。
また、粘り気を持つことから、この種類は切削加工では基本的に使われません。
2000番台
銅を含む合金です。
銅は酸化しやすいことから、2000番台のアルミニウム合金は耐食性はあまり高くなく、アルマイトという表面処理をすることで向上させるケースが多いです。
一方で、銅を添加することで強度が上がるというメリットがあります。
2000番台ではジュラルミンと超ジュラルミンという材料が有名です。
これらは後の章で詳しく説明します。
3000番台
マンガンとの合金で、アルミ缶に使われているのはこの3000番台の金属です。
耐食性を維持しつつ、強度を上げているのが特徴です。
この種類は切削加工で使われることはあまりありません。
4000番台
シリコンが添加されることで耐摩耗性、耐熱性がより向上しています。
熱膨張に強いという特徴もあります。
切削加工ではあまり使われません。
5000番台
マグネシウムを添加することで、強度、耐食性が高くなっています。
また、加工性に優れており、切削加工でよく使われます。
6000番台
シリコンとマグネシウムが添加されたアルミニウム合金です。
5000番台よりもさらに強度や耐食性に優れています。
7000番台
亜鉛とマグネシウムを添加した合金で、熱処理を施すことでさらに強度が増します。
7000番台でよく知られるアルミニウム合金に「超々ジュラルミン」があります。
アルミ切削加工で使われるジュラルミンとは?
この章ではアルミニウム合金の中でも有名なジュラルミンについて解説します。
ジュラルミン
アルミニウムと銅の合金で、A2017と表記されることもあります。
硬度は純アルミニウムよりも高いですが、超ジュラルミンほどではありません。
また、比重もアルミニウムと超ジュラルミンの間に位置します。
耐食性と溶接性はあまり高くありません。
超ジュラルミン
ジュラルミンと同じ2000番台で、合金番号はA2024です。
ジュラルミンに比べて銅とマグネシウムが多く含まれており、強度と被削性に優れています。
銅を多く含むため、ジュラルミン同様、耐食性は低いです。
超々ジュラルミン
合金番号はA7075。
銅やマグネシウムに加えて亜鉛を含むのが特徴で、アルミニウム合金の中でもトップクラスの強度を誇ります。
軽量且つ強度が高い性質を持つため、航空・宇宙産業でよく使用されています。
アルミ切削加工のメリット3つ
この章ではアルミ切削加工のメリットをご紹介します。
複雑な形状が可能
アルミニウムは加工性に優れているため、様々な形状を作ることができます。
また、コンピューターでプログラミングされた通りに機械が動いて切削加工を行うため、寸法精度は高いです。
加工時間が短い
被削性の高い素材を用いることで、加工時間は短くなります。
完成までの時間が短いと、人件費など様々なコストが浮くため、製作コストも抑えることができます。
試作品を作りやすい
鋳造のように製作の際に型を作る必要がなく、試作品や少量の発注も気軽に行うことができます。
アルミ切削加工のデメリット3つ
この章ではアルミ切削加工のデメリットをご紹介します。
加工中に粉が出る
アルミニウムを切削する際、細かい粉が出ます。
これを放っておくと金属の表面に傷がついたり、工具に粉がついてなかなか取れず、加工の精度が落ちたりするリスクがあります。
また、粉が飛散すると作業環境の安全性にも影響します。
熱によって寸法が変わることも
アルミニウムは熱膨張率が高く、切削加工で生じる温度変化によって加工物の寸法が変化する可能性があります。
薄い製品は変形することも
薄い加工物は切削すると反りや歪みが生じて変形する恐れがあります。
アルミ切削加工が難しいと言われる理由
アルミニウムの切削加工では次のようなトラブルが起こりやすいです。
・アルミが工具に溶着する
・粉が工具につく
・温度変化によって寸法が変わる
このため、アルミの切削加工は難しいと言われることもあります。
しかし、予想されるリスクに適切に対策を講じることで防ぐことができます。
具体的な方法としては次のようなものがあります。
・溶着が発生しにくいシャープな刃先を選ぶ
・エアブローによって粉をこまめに取り除く
・切削油を流して粉を排出する
・冷却効果のある切削油を流す
・適切な速度で切削する
まとめ
アルミニウムは加工性が高く、切削加工がよく行われます。
ただし、アルミは融点が低いことから、切削加工中に熱を持ち、溶けて工具にひっついてしまうことがあります。
すると、工具が折れたり、加工精度が落ちたりする問題が発生します。
このような特性ゆえに「アルミ切削加工は難しい」と言われることもあります。
しかし、きちんと対策を行えば精度の高い製品を作ることは可能です。
アルミの切削加工を依頼するなら、実績のある業者に問い合わせしましょう。
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