NC旋盤と汎用旋盤の違いをどこよりも詳しく解説
この記事では次の内容をまとめています。
・NC旋盤と汎用旋盤の違い・NC旋盤の特徴
・汎用旋盤の特徴
NC旋盤か汎用旋盤で加工を考えている方が知っておくべきことを全てまとめました。
NC旋盤とは
NC旋盤はNC装置(数値制御装置)がついた旋盤のことです。
NCとは”Numerical Control”の略で、数値制御という意味があります。
プログラムによって機械に動作を指示し、製品や刃物を自動で動かしながら加工を行います。
勝手に作業が進むため、加工中は担当者がつきっきりで様子を見る必要はありません。
汎用旋盤とは
一般的に「旋盤」と言うと汎用旋盤のことを指します。
「普通旋盤」と呼ばれることもあります。NC旋盤よりも歴史は古いです。
汎用旋盤では作業者がハンドルやレバーを操作しながら、素材を刃物で切削しつつ加工を行います。
手動なので加工は作業者の感覚によって進められる部分が大きいです。
試作品を作ったり、少し製品を修正したりするのによく使われます。
NC旋盤と汎用旋盤の違い8つ
この章ではNC旋盤と汎用旋盤の違いを項目別に解説します。
プログラムの有無
大きな違いはプログラムの有無です。
NC旋盤では加工前にプログラムを作成し、入力しなければいけません。
一方で、汎用旋盤ではプログラムは必要ありません。
汎用旋盤では作業者が常についていなければなりませんが、NC旋盤は勝手に加工が進むので、一人が複数の機械を見たり、機械を動かしつつ、他の作業にあたったりすることができます。
NCプログラムは保存できるので、過去に生産した製品の発注が再度あったときもすぐに対応できるのが便利です。
向いている加工
NC旋盤は量産加工に向いています。
一度プログラムを作れば何度も同じ製品を作れるためです。
一方で、汎用旋盤は単品加工が得意です。
手動で操作を行うので、1つだけの試作品の製作もすぐに対応できます。
たくさんの注文でも1つ1つ別の加工が必要な場合も汎用旋盤の方が向いています。
加工開始までの時間
NC旋盤は加工に取り掛かる前にプログラムを作成しなければならないので、加工開始までにかかる時間は長いです。
汎用旋盤はプログラムが不要なので、注文を受けてからすぐに加工に取り掛かることもできます。
そのため、少ない数の生産ならNC旋盤よりも汎用旋盤で製造した方が早く済むこともあります。
納品を急ぐ場合はより早く加工が終わる方法で依頼するのがポイントです。
精度の高さ
NC加工はプログラムによって細かい単位まで寸法を指定することができます。
また、機械によって自動で加工が行われるため、精度は均一です。
汎用旋盤は作業者が手動で操作を行うため、担当者の経験値や感覚に左右されます。
そのため、人によって品質に差があったり、同じ人による生産でもバラツキが出ることがあります。
精度は汎用旋盤よりもNC旋盤の方が高いと言えます。
安定したクオリティを求めるならNC旋盤の方が適しているでしょう。
刃物の交換
旋盤にはワークを削るための刃物がついています。「バイト」と呼ばれることもあります。
加工内容によっては様々な工具が必要で、汎用旋盤であれば担当者が必要なタイミングで交換を行います。
新品のバイトと長時間使用したバイトでは切れ味が変わりますが、汎用旋盤ならそちらを加味しながら加工できます。
NC旋盤の場合は機械によっては工具を10本以上装着できるものもあり、交換の手間が省けます。
一般的に刃物台に付けられる工具の数はNC旋盤の方が多いです。
柔軟性
柔軟性はNC旋盤よりも汎用旋盤の方が高いと言えます。
NC旋盤はプログラムで動くため、作業の途中で寸法に変更があっても機械は作動し続け、対処ができません。
一方で、汎用機械なら急に修正が入ってもすぐに対応できます。
汎用旋盤が試作品の加工に向いているのはこうした理由もあります。
安全性
旋盤は刃物が回転する工作機械なので、常に安全の問題が付きまといます。
まず、NC旋盤は作業が自動化されており、作業者がその場を離れて作動するため、安全性は高いです。
一方で、汎用旋盤は作業者がつきっきりですし、刃物を交換する機会もNC旋盤より多いため、事故や怪我のリスクが高いです。
例えば、ワークや工具が飛んで怪我をするということが考えられます。
そのため、特に汎用旋盤で生産する際は工具や製品がきちんと装着されているかを確認するなど、事故対策を徹底することが求められます。
構造
NC旋盤と汎用旋盤では機械の構造が異なります。
まずNC旋盤は次のような構造になっています。
・主軸台…ワークを取り付け、回転する部分。
・ベッド…工作機械全体を支える土台。
・心押し台…主軸台の反対に置かれる。
ワークの端を押さえて支えることで回転を安定させる。
・チャック…主軸台の先端に取り付けられる。ワークを固定して回転する。
・刃物台…切削工具を取り付けるもの。
・NC装置…プログラムの内容をもとに機器に指示を出すもの。
・操作盤…機械を操作するためのボタンがついている。プログラムの作成も行える。
・オイルユニット…作動油や潤滑油が入っている。
続いて、汎用旋盤は次のような構造になっています。
・主軸台…ワークを取り付け、回転する部分。
・ベッド…工作機械全体を支える土台。
・心押し台…主軸台の反対に置かれる。
ワークの端を押さえて支えることで回転を安定させる。
・チャック…主軸台の先端に取り付けられる。ワークを固定して回転する。
・刃物台…切削工具を取り付けるもの。
・往復台…刃物台が乗っており、水平移動する。
・送り装置…往復台の上に乗っており、さらに細かい移動をする。NC旋盤の特徴3つ
この章では前章の補足としてNC旋盤の特徴をご紹介します。
自動運転が可能
NC旋盤の大きな特徴は加工が自動化されていることです。
入力されたプログラムに基づいて加工を行います。
自動化することで生産効率は上がり、人件費の削減にもなります。
自動化しても汎用旋盤と同じように以下のような加工を行います。
・外径加工
・内径加工
・端面加工
・ネジ加工
・溝加工
・穴あけ加工複雑な加工が可能
NC旋盤は機械によって加工されるため、手動では難しい複雑な加工が実現できます。
一般的に、複雑な加工は仕上げるのに手間がかかりますが、機械なので素早く、且つ大量生産することも可能です。
生産したい製品の形が汎用旋盤とNC旋盤のどちらが適しているか、業者に判断してもらいましょう。
プログラムを作るのに知識が必要
NC旋盤による加工はプログラムを作成することが欠かせません。
プログラムを作成するには一定の知識が必要です。
そのため、経験が豊富な業者に依頼すると安心です。
汎用旋盤の特徴2つ
この章では補足として汎用旋盤の特徴をご紹介します。
複雑な形状にはあまり向いていない
汎用旋盤は複雑な加工をするにはあまり向いていません。
そのため、加工の内容によっては汎用旋盤ではなく、NC旋盤で行う方が望ましい場合もあります。
手直ししやすい
汎用旋盤の特徴として、手直ししやすいという点があります。
修正加工に向いていますし、途中で加工の内容が変わった際にも柔軟に対応できます。
手動ならではの強みです。
まとめ
NC旋盤と汎用旋盤は同じ旋盤ですが、様々な違いがあります。
一番大きな違いはNC旋盤ではプログラムを作成・入力し、自動で加工を行う点でしょう。
それぞれメリット・デメリットがあり、どちらで加工すべきかは作る製品の形状や数などによって異なるため、まずは業者と相談しましょう。
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