銅合金鋳造で使われるJIS規格の素材一覧|種類・用途・特徴まとめ

この記事では次の内容をまとめています。
・銅合金鋳造で使われる素材のJIS規格
・JIS規格の記号の意味
・JIS規格の素材の種類と特徴
銅合金鋳造を依頼する人が知っておくべきことを全てまとめました。
銅合金鋳造で使われる素材のJIS規格は?
銅合金鋳造で用いる素材には「JIS H 2202」というJIS規格で分類された鋳物用銅合金地金がよく使われます。
地金とは製品に加工する前の金属のこと。
鋳造ではこれを溶かすことによって製品を作ります。
JIS規格では成分や機械的特性によって種類が細かく分られています。
ニーズに合った性質を持つ製品にするためにもJIS規格を知ることは大切です。
JIS H 2202・JIS H 5120・JIS H 5121の違い
銅合金鋳造に関わるJIS規格に、JIS H 2202、JIS H 5120、JIS H 5121があります。
以下に、それぞれの規格について簡単にまとめました。
JIS H 2202:鋳物用銅合金地金(銅合金鋳物の原材料)について規定したもの
JIS H 5120:銅及び銅合金鋳物(鋳造によって製造された銅または銅合金鋳物)について規定したもの
JIS H 5121:銅合金連続鋳造鋳物(連続鋳造によって製造された、銅合金の連続鋳造鋳物)について規定したもの
銅合金鋳造で使われるJIS規格の素材の記号の意味
「JIS H 2202」では「CACIn+数字」の形式で鋳物用銅合金地金を分類しています。
CACは“Copper Alloy Castings”の略で「銅合金鋳物」を意味します。
Inは地金を意味する”Ingot”から来ています。
数字は200番台から900番台まであり、CACIn300番台は鋳物用高力黄銅合金地金、CACIn400番台は鋳物用青銅合金地金・・・と数字のまとまりごとに素材の系統が異なります。
銅合金を表すJIS規格として、「C+4桁の数字」もよく見られます。これは銅及び銅合金の板及び条を規定したもの(JIS H 3100)です。
銅合金鋳造で使われるJIS規格の素材の種類と特徴
この章では銅合金鋳造で使われる素材の種類や特徴についてご紹介します。
鋳物用黄銅合金地金・鋳物用耐脱亜鉛黄銅合金地金(CACIn200番台)
鋳物用黄銅合金地金
CACIn201:ろうづけしやすく、機械的強度はあまり高くない。
CACIn202:比較的鋳造が容易。
CACIn203:機械的強度に特に優れている。
電気部品のほか、色を生かして装飾用部品にもよく使われます。
鋳物用耐脱亜鉛黄銅合金地金
CACIn211
CACIn221
CACIn231
CACIn232
鋳物用耐脱亜鉛黄銅合金地金は耐脱亜鉛性に優れており、給水用具など、水回りの器具によく使われます。
鋳物用高力黄銅合金地金(CACIn300番台)
CACIn301:鋳物用黄銅合金地金よりも硬さや強さに優れている。耐食性も高い。
CACIn302:CACIn301よりも硬い。耐摩耗性が高い。
CACIn303:CACIn302よりも硬さ、強さ、耐摩耗性に優れる。
CACIn304:鋳物用高力黄銅合金地金の中で最も硬さ、強さ、耐摩耗性に優れる。
これらの素材は耐食性が高いため、船のプロペラなど、船舶部品に使われることが多いです。
また、CACIn303やCACIn304は硬さや強さに優れているため、こうした性質が求められる製品を作る際に選ばれます。
鋳物用青銅合金地金(CACIn400番台)
CACIn401:湯流れや被削性が良い
CACIn402:耐圧性、耐摩耗性、耐食性、機械的性質に優れている。
CACIn403:青銅系の中で最も耐海水性に優れる。耐圧性、耐摩耗性、耐食性はCACIn402よりも高い。
CACIn406:耐圧性、耐摩耗性、被削性、鋳造性に優れている。生産量が多く、よく使用されている。
CACIn407:CACIn406と似た性質を持ち、機械的性質はより優れる。
CACIn408:環境対策のために鉛の量を抑えた青銅。鉛の含有量が少ない分、通常の青銅系の地金に比べて被削性は劣る。
CACIn411:鉛フリーの青銅。鉛の含有量が少ない分、被削性は劣る。
耐食性や耐海水性に優れているものが多く、バルブや給水栓といった水道器具や、船舶用の部品に使われることが多いです。
近年、鉛の環境や人体への影響が注目され、使用を控える動きが出ているため、CACIn408やCACIn411のように、鉛の浸出量が少ない地金の注目度が高くなっています。
鋳物用りん青銅合金地金(CACIn500番台)
CACIn502:耐食性や耐摩耗性に優れている。
CACIn503:CACIn502よりもさらに硬いのが特徴。
CACIn502は歯車や軸受、CACIn503は摺動部品や油圧シリンダーなどを作る際に用いられます。
鋳物用鉛青銅合金地金(CACIn600番台)
CACIn602:耐圧性、耐摩耗性に優れ、強度や伸びなどの機械的性質も比較的高い。
CACIn603:なじみ性が良い。
CACIn604:CACIn603よりもなじみ性が良い。
CACIn605:なじみ性と耐焼き付き性に特に優れている。
鋳物用鉛青銅合金地金は中高速・高荷重用軸受、中高速・中荷重用軸受、中高速・低荷重用軸受などによく使われます。
鋳物用アルミニウム青銅合金地金 (CACIn700番台)
CACIn701:じん性が高く、曲げに強い。耐食性、耐熱性、耐摩耗性、低温特性にも優れている。
CACIn702:強く、耐食性や耐摩耗性に優れる。
CACIn703:強度が特に高い。大型の鋳物を作るのに向いている。
CACIn704:硬さや強度に特に優れている。シンプルな形状の大型鋳物に向いている。
耐食性が高いため、ポンプや船舶用のプロペラによく使われます。
鋳物用シルジン青銅合金地金(CACIn800番台)
CACIn801:湯流れが良く、強度や耐食性に優れる。
CACIn802:CACIn801よりもさらに強度が高い。
CACIn803:湯流れが良く、焼きなまし脆性が少ない。 耐食性や強さにも優れる。
CACIn804:鉛浸出量がほとんどない。湯流れが良い。
船舶用の部品や軸受に使われることが多いです。CACIn804は鉛フリー銅合金で、比較的新しく規定されたもので、水道回りの部品を作る際によく用いられます。
鋳物用ビスマス青銅合金地金・鋳物用ビスマスセレン青銅合金地金(CACIn900番台)
鋳物用ビスマス青銅合金地金
CACIn901:鉛浸出量がほとんどない。機械的性質と耐圧性に優れる。
CACIn902:鉛浸出量がほとんどない。CACIn406と同等の機械的性質を持つ。
CACIn903:鉛浸出量がほとんどない。被削性、機械的性質、湯流れの良さがCACIn406とほぼ同程度。
CACIn904:鉛浸出量がほとんどない。厚肉鋳物を作る際に向いている。耐圧性はCACIn902と同程度。
CACIn905:鉛浸出量がほとんどない。
CACIn906:鉛浸出量がほとんどない。
鋳物用ビスマスセレン青銅合金地金
CACIn911:鉛浸出量がほとんどない。CACIn406と同程度の機械的性質を持ち、被削性はCACIn902よりも優れる。
CAC406に取って代わる金属を開発する中で生まれた、比較的新しい鉛レスの銅合金です。
まとめ
銅合金鋳造で使われる素材は「JIS H 2202」というJIS規格で分類されたものがよく使われます。
近年、鉛の浸出量が少ない銅合金のニーズが高まり、開発が進められたことで、この規格に新しい金属が追加されており、これからもまた種類が増えるかもしれません。
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