NC旋盤とマシニングセンタの違いを徹底比較
この記事では次の内容をまとめています。
・マシニングセンタの特徴
・マシニングセンタの種類
加工するのにNC旋盤とマシンングセンタのどちらを選ぼうか迷っている方が知っておくべきことをまとめました。
NC旋盤とは
NCは” numerically control” の略で、数値制御という意味です。
プログラムによって加工条件を指示し、自動で加工を行うのが特徴です。
次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
・品質が安定している
・注文量が多くても納品が早い
・複雑な加工に対応可能
・精度が高い
・様々な素材に対応可能
デメリット
・プログラムの良し悪しは職人に左右される
・コストが高くなることも
マシニングセンタとは
自動工具交換装置が搭載されたNC工作機械です。
自動工具交換装置は”Automatic Tool Changer” を略してATCと呼ばれることもあります。
工具を人の手によって交換する必要がないため、生産性は高いです。
基本的な特徴はNC旋盤と同じです。
NC旋盤とマシニングセンタの違い4つ
この章ではNC旋盤とマシニングセンタの違いをご紹介します。
工具の取り替え方法
NC旋盤とマシニングセンタの一番大きな違いは工具の取り替え方法でしょう。
先ほども説明したように、マシニングセンタには自動工具交換装置(ATC)が付いていて、加工に必要な工具を機械にセットしておけば自動で必要なタイミングで交換してくれます。
一方で、NC旋盤にはATCは搭載されていません。
複数の刃物をあらかじめマシンに設置することは可能ですが、交換は手動で行わなくてはいけません。
構造
NC旋盤の大まかな構造は次の通りです。
・主軸台…ワークを取り付け、回転する部分。
・ベッド…工作機械全体を支える土台。
・心押し台…主軸台の反対に置かれる。
ワークの端を押さえて支えることで回転を安定させる。
・チャック…主軸台の先端に取り付けられる。ワークを固定して回転する。
・刃物台…切削工具を取り付けるもの。
・NC装置…プログラムの内容をもとに機器に指示を出すもの。
・操作盤…機械を操作するためのボタンがついている。プログラムの作成も行える。
・オイルユニット…作動油や潤滑油が入っている。マシニングセンタに搭載されているものは種類によって異なりますが、例えば、次のようなものがあります。
・ATC
・ベッド
・主軸…工具を取り付け、回転する部分。
・サドル…ベッドの上で移動する部分。
・テーブル…材料を固定する部分。
・コラム…ベッドに対して垂直・上方向に設置されている。
・マガジン…工具を収納するもの。
精度の高さ
精度の高さはマシニングセンタに軍配が上がります。
なぜなら、工具の交換を自動で行うため、設置の仕方にブレがなく、安定した仕上がりになるからです。
取り付ける工具は大きさも長さも様々ですが、それらのデータを入力しておけば、入れ替える際に特徴に合わせて適切に補正するので寸法通りに仕上げます。
一方で、手動で工具を交換する際は刃物の角度など微妙な調整の違いで仕上がりにバラつきが出ることがあります。
安全性
NC旋盤で工具の交換を行う際、刃物なのでどうしても怪我の危険性があります。
マシニングセンタはこの工程が自動化されているので、安全性は高いです。
ただし、最初に機器に取り付ける際は手動で作業を行うため、油断は禁物です。
マシニングセンタの特徴6つ
この章ではマシニングセンタの特徴を補足としてご紹介します。
NCプログラムを使用する
マシニングセンタではNCプログラムによって数値情報で加工条件を機械に指示します。
そのため、加工は自動で行われます。
プログラムを使用することによって、人の手では難しいような複雑な加工も実現できるため、対応できる形状の幅は広いです。
この点はNC旋盤も同様です。
様々な加工が可能
マシニングセンタでは次のような加工が可能です。
・中ぐり・フライス削り
・穴あけ
・ネジ立て
・リーマ仕上げ
自動車産業など、様々な業界の金属部品がマシニングセンタによって作られています。
量産加工が得意
マシニングセンタはプログラムによって加工が自動化されているため、生産性が高く、量産加工に向いています。
NC加工も同様ですが、マシニングセンタは工具を交換する時間が浮く分、加工にかかる時間はより短いです。
プログラムを作成するのに時間はかかりますが、完成すればあとはどんどん加工するのみです。
また、過去にも生産した部品を製作する場合、プログラムが残っていればそれを使ってすぐに加工に移ることができます。
コスト削減になる
マシニングセンタは1台で様々な工具を用いて加工を行います。
工具の交換も自動で行われるため、加工中は人の手が必要ありません。
そのため、人件費の削減になります。
機械は高額なので最初こそ大きな支出はありますが、長期的に見ると削減できる額は大きく、生産性も高いので、大きなメリットがあるでしょう。
教育の手間が省ける
金属の切削加工を手動で行う場合、職人を育成しなければいけません。
寸法通りに仕上げるには経験が必要なので、一人前の職人が育つまで教育にかなりの時間がかかります。
一方で、マシニングセンタを導入すれば機械が加工を行うため、職人は必要ありません。
職人育成の手間が省けますし、教育コストも削減できます。
もちろん、マシンの管理、プログラムの作成、工具の取り付けなど、人の手が必要なシーンはありますが、それでも大幅な人件費削減になるはずです。
24時間稼働できる
稼働開始から完成までマシンだけで完結するため、24時間生産し続けることが可能です。
手動での加工の場合は、24時間作業し続けることはできませんし、疲労により一定の精度を保ち続けることも難しいです。
マシニングセンタなら機械による加工なので精度が落ちる心配もありません。
マシニングセンタの種類4つ
この章ではマシニングセンタの種類とそれぞれの特徴をご紹介します。
立型マシニングセンタ
工具が垂直に設置されるタイプです。
ワークに対して上から切削していくため、加工状況を目視しやすいのがメリットです。
ただし、加工によって生じた屑が溜まりやすいのがデメリットで、上手く除去できるよう対策をすることが大切です。
上面の加工が多い製品に向いていて、大量生産にはあまり向いていません。
横型マシニングセンタ
工具が水平に設置されるため、切り屑が落ちやすいのがメリットです。
一般的に、立型マシニングセンタに比べると機械が大きく、設置するのにより広い面積が必要とされます。
横から材料を支える構造になっているため、重量物はたわんでしまうリスクがあり、横型マシニングセンタには不向きです。
門型マシニングセンタ
工具が垂直に設置されるため、立型マシニングセンタに似ていますが、マシンを正面から見たときに門の形をしており、門型マシニングセンタと呼ばれます。
テーブルは長く、大きいため、大型製品や長尺製品を加工するのに向いています。
5軸マシニングセンタ
従来のX軸、Y軸、Z軸の3軸に、さらに2つの回転軸を加えて加工するタイプです。
軸が多いので、他のタイプよりもより複雑な加工をすることが可能です。
3軸では途中でワークをセッティングし直して角度を変えなくてはいけなかった形状でも、途中の手入れが必要なくなります。
ただし、プログラムの複雑さが増すため、慎重に作成しなくてはいけないという注意点があります。
まとめ
NC旋盤とマシニングセンタとの大きな違いは自動工具交換装置(ATC)が搭載されているかどうかです。
これにより、精度の高さ、安全性、構造にも違いがあります。
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