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鋳造の溶湯の温度管理に関する基礎知識

鋳造の溶湯の温度管理に関する基礎知識

この記事では次の内容をまとめています。

・溶湯とは

・溶湯の温度が重要な理由

・温度管理ができないと起こること

 

鋳造を依頼しようと考えている人が知っておくべき溶湯の温度管理の基礎知識をまとめました。

溶湯とは

金属を溶かして液体状にしたもので、鋳造の際に使われます。

溶湯をあらかじめ用意した型に流し込むことで製品を作ります。

後からもご紹介しますが、金属は非常に高い温度で液体に変わるため、溶湯もかなりの熱さです。

溶湯を用いる鋳造の2つの工程

この章では溶湯を使用する鋳造の工程についてご紹介します。

溶解工程

金属を溶かして液体状にする工程です。

新品の金属だけでなく、リターン材と呼ばれる、過去に鋳造で使用したものの製品にならなかった金属も使われます。

溶解中、温度が上がってくると溶湯の表面に不純物が浮かび上がります。

これを取り除くことで純度が上がります。

溶湯の温度は使用する金属によって様々です。

鋳込工程

鋳型に溶湯を流し込む工程です。

単純な作業のように思えるかもしれませんが、実はそうではなく、入れるスピードなど、あらゆる面に気を配らなければ寸法精度の高い製品は出来上がりません。

鋳込み作業は人の手によって行う場合もあれば、クレーンで操作しながら行うこともあります。

溶湯の温度管理が重要な理由

溶湯は温度が下がると固まり始めます。

鋳込みが完全に終わってから固まり始めれば良いのですが、残念ながらそう単純にはいきません。

なぜなら、溶湯は場所によって冷えるスピードが異なるためです。

鋳込みの際、鋳型に接触する部分は温度が下がりやすいです。

一方で、鋳型に接触しない部分は冷えるスピードが遅いです。

もし溶湯の温度が低ければ、型と接触している部分は固まり、それ以外の場所は固まらずにどんどん広がるという事態が起こります。

すると、場所によってムラが生じ、不良品が発生する原因となります。

こうした背景から、品質の高い製品を作るためには溶湯の温度管理は非常に重要だと言えます。

溶湯の温度管理ができていないと起こること4つ

この章では溶湯の温度管理が不十分だと起きてしまうことをご紹介します。

不良が発生する

溶湯が適切な温度でなければ不良が発生します。

例えば、先ほどご説明したように場所によって溶湯が冷えるスピードが違うと「湯じわ」が生じ、製品を作り直さなければいけなくなります。

無駄なコストがかかる

不良が発生したものは製品として出荷できないため作り直すことになります。

すると製作の際に生じたコストが無駄になります。

また、その際に稼働していた従業員の人件費も無駄になってしまいます。

このように、温度管理を徹底していないとコスト面にも影響が出てしまいます。

ちなみに、出荷できなかった金属はリターン材となり、再度液体状にして溶湯として使用することができます。

生産効率が下がる

作り直しが発生すると生産効率は下がります。

一発で鋳造を成功させるため、職人は適切な温度管理ができるよう、日々慎重に作業を行っています。

温度が高すぎると酸化が進む

ダイカストと呼ばれる鋳造方法では溶湯の温度が高くなりすぎると、酸化が進んで酸化物が製品内に入り込み、一部分だけが固くなってしまう、いわゆる「ハードスポット」が生じる原因となります。

溶湯の温度管理を徹底するために必要なこと3つ

この章では溶湯の温度を徹底的に管理するために欠かせないことをご紹介します。

温度管理データをとる

温度のデータをとり、常にその時点での温度を把握できるようにすると、最適な温度を維持する大きな助けになります。

また、データを収集すれば、後から数値を振り返ることもできるため、正しい温度下で製作された証明になります。

充填時間の調整

溶湯の温度を適切に保つには充填時間もポイントとなります。

溶湯を鋳型に流し込む際、速度が遅すぎると先に入れたものから固まったり、途中で溶湯の温度が下がりすぎたりして適切な状態で行き渡らず、作り直しになることもあり得ます。

どのくらいのスピードで流し込むべきかは鋳型の形や薄さなど、条件によって異なります。

職人の経験

温度管理を徹底するには職人の腕が欠かせません。

熟練の職人ほど適切な温度管理を行う能力に長けています。

鋳造で使う金属にはそれぞれ融点があり、溶湯の適切な温度も存在しますが、それを守れば問題ないとは限らないからです。

例えば、その日の気温によって適切な溶湯の温度は変わり、こうした見極めができなければ鋳造が失敗したり、製品の品質が下がったりすることもあります。

そのため、鋳造を依頼する際は職人の経験が豊富な業者を選ぶのがおすすめです。

金属別の鋳造温度

溶湯の適切な温度の目安は金属によって異なります。

融点がそれぞれ違うためです。

溶湯の温度は融点よりも高めにすることで不良の発生を防ぎやすくなります。

参考に主要な金属の融点をご紹介します。

アルミニウム 660℃

亜鉛 419.5℃

マグネシウム合金 650℃

鉄 1536℃

溶解・鋳込工程で溶湯の温度以外に重要なこと5つ

この章では溶湯の温度管理以外に鋳造で大切なことをご紹介します。

成分調整

品質の高い鋳物を作るには、やはり成分も非常に重要なポイントです。

新品の金属やリターン材だけでなく、炭素や珪素なども配合させます。

溶湯を作る過程で不純物が浮いてきたら取り除き、純度を上げます。

溶湯の量

溶湯は適切な量を用意することが求められます。

まず、少なすぎると、当然、型を満たすことができず、寸法通りの製品には仕上がりません。

一方で多すぎても、手間も用意した材料も無駄になり、こちらも望ましくありません。

鋳込速度

前述の通り、鋳込みの速度が遅いと金属が冷えてしまい、先に入れた金属が途中で固まり始めてしまいます。

そこで、融点よりも高い温度の溶湯を手早く充填することが大事です。

一般的に、鋳型の肉厚が薄いと早く固まり始めるため、製品によって適切なスピードを見極めることが求められます。

鋳型の温度

ダイカストの場合、金型の温度も品質を左右します。

金型の温度が高すぎると、焼き付きや溶損といった不良の原因となります。

また、低すぎると溶湯の温度が下がりやすくなり、湯じわが発生するなど、様々な問題が生じます。

鋳造圧力

鋳造方法によっては充填の際や充填後に圧力が加えられます。

この圧力が高すぎると鋳造バリや寸法不良が生じやすくなります。

一方で、低すぎると充填不足などを引き起こします。

弊社での溶湯の温度管理の取り組み

弊社は鋳造に長年携わる熟練の職人がおり、長年の勘をもとに、その時々の鋳造の条件に合わせて適切な溶湯の温度を見極めます。

毎回の状況を記録しているため、毎度、溶湯の温度や注ぎ込む時間が異なっても安定した品質の製品を出荷することができています。

弊社が導入している溶解の設備

設備名 可傾式溶解炉 380kg/550㎏

メーカー名 TYK/共栄

台数 2台

自動造型ラインに組み込まれているためスムーズに注湯が出来るのがメリットです。

大小2基の溶解炉があるため、様々な重量・数量に対応出来ます。

まとめ

溶湯は温度が下がると固体になるため、鋳込み作業の過程で温度管理が適切にできていなければ不良品の発生の原因となります。

適切な温度は金属の種類、その日の気温、製品の厚さなど条件によって異なり、長年の勘を必要とするため、経験が豊富な職人がいる業者に依頼するのがおすすめです。

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