アルミ鋳造の特徴・メリット・デメリットを徹底解説
この記事では次の内容をまとめています。
・アルミ鋳造とは
・アルミ鋳物の特徴
・アルミニウム合金の主な種類
アルミ鋳造を依頼しようと考えている方が知っておくべきことを全てまとめました。
アルミ鋳造とは
アルミニウム合金を用いて行う鋳造です。
アルミ鋳造によって作られた製品はアルミ鋳物やアルミキャストと呼ばれます。
アルミニウム合金は細かい種類があり、用途によって使い分けられます。
製品例としては次のようなものがあります。
自動車部品、架線用部品、船舶部品、機械部品、門、フェンス
アルミ鋳物の特徴7つ
この章ではアルミ鋳物の特徴をご紹介します。
電気伝導性が高い
アルミニウムの電気伝導率は銅の約60%ですが、比重は3分の1なので、同じ重さだと2倍の電流を通します。
また、鉄と比べると電気伝導率は約3倍です。
そのため、機械部品や自動車部品など、エレクトロニクス分野で活用されています。
熱伝導性が高い
アルミニウムは熱伝導性も高く、鉄の約3倍あります。
同時に冷めやすいという性質もあります。
この性質を生かして、冷暖房機器、熱交換器、飲料缶、エンジン機器、鍋、フライパンなどに使用されています。
耐食性が高い
耐食性が高いということは錆びにくいということです。
アルミニウムは元々耐食性が高いものですが、アルミニウム合金はさらにその性質が高まります。
鉄のように錆が発生したり、それに伴って見た目が悪くなるのを防ぐことができます。
そのため、風雨に晒される建築物や、水に接する船舶部品にも使われます。
磁気を持たない
アルミニウムは非磁性です。磁気を持たない方が望ましい場合に活用されます。
金や銀も非磁性ですが、アルミニウムはより安価なのがメリットです。
この性質を生かして計測機器、電子医療機器などに使われています。
軽い
アルミキャストは軽いのも特徴の1つです。
アルミニウムでできている1円玉は硬貨の中でも特に軽いですよね。
重さは鉄の3分の1程度で、製品を軽量化したいときに重宝する素材です。
現代はあらゆる分野の製品で軽量化が進められており、アルミ鋳造なら需要に応えられます。
アクセサリーや装飾品の製造にも使われます。
外観が綺麗
アルミ鋳物は外観が綺麗というメリットがあります。
アルマイト処理という表面処理を施すと、グレーで落ち着いた、ツヤのある見た目になります。
アルマイト処理は表面硬度を高めたり、耐食性を高めたりするメリットもあります。
ただし、電気伝導性が失われてしまうのはデメリットです。
皮膜処理の際に染料着色や電解着色を行うと色を付けることもできます。
デザイン性を求めるケースでもアルミニウムは適しています。
ちなみに、銅も見た目が綺麗な金属としてよく挙げられ、アルミニウムとは違った系統の色をしています。
リサイクルしやすい
アルミニウムは酸化しにくく、融点が低いことから、再生しやすいという特徴を持ちます。
アルミ缶がリサイクルされているのはこうした背景があるためです。
ちなみにアルミニウムの融点は660度。鉄は1536度、銅は1084度なのでかなりの差があります。
アルミニウム合金の主な種類5つ
この章ではアルミ鋳造で使われるアルミニウム合金の主な種類をご紹介します。
Al-Si系
・流動性がいい
・耐食性に優れる
・溶接性に優れる
・被削性に劣る
・機械的強度は高くない
・薄肉、複雑な形状の鋳物に向いている
Al-Si-Cu系
・鋳造性に優れる
・強度が高い
・Al-Si-Mg系よりも強度が高い
・耐食性に劣る
・伸びが悪い
Al-Si-Mg系
・耐食性に優れる
・強度が高い
・熱処理により強度が高くなる
・鋳造性に優れる
・靭性に優れる
Al-Cu-Mg系
・機械性質に優れる
・切削性に優れる
・電気伝導性に優れる
・耐食性に劣る
・鋳造性に劣る
・製造の際の不良に注意しなければならない
Al-Mg系
・耐食性に優れる
・機械的性質に優れる
・切削性に優れる
・伸びがいい
・耐海水性に優れるので船舶部品や食料用器具に使われる
・鋳造性に劣る
アルミ鋳造の工程6ステップ
この章ではアルミ鋳造の工程を流れに沿ってご紹介します。
設計図の作成
まず、製品の設計図を作成します。
この設計図を軸に鋳造が進められるため、非常に大事なプロセスです。
鋳造を依頼したい製品の設計図を持っていなくても、業者によっては1から作成をしてもらえる場合があるので、問い合わせの際に事情を説明し、対応が可能かどうか聞いてみましょう。
造型
型を作成します。造型方法は様々なものがあり、業者によって何を採用しているかは異なります。
製品が空洞を持つ形状の場合、メインの型に加えて、「中子」と呼ばれる空洞を作るための専用の型も製造します。
型の仕上がりによって製品の寸法も変わるため、精度の高いものを作ることが求められます。
弊社ではF1モールディングや自動造型機での製造にも対応しています。
溶解
アルミニウム合金を溶かして液体状にします。
アルミニウムは融点が低いのが特徴です。溶かした金属は溶湯と呼ばれます。
この工程で不純物を除去することで純度を上げます。
溶かした金属の温度や成分によって製品の品質が変わるので、慎重な作業が求められます。
注湯
溶湯を鋳型に注ぎ込みます。このとき、入れるスピードが遅く、金属の温度が下がると不良が発生するため、適切なスピードで入れることが求められます。
鋳造では未充填、ひけ巣、歪み、低温割れなど、様々な不良が起こります。
そのため、腕のある職人がいて、実績も豊富な業者に依頼するのが理想的です。
注湯が終わったら金属が冷えて固まるのを待ちます。
型バラシ
金属が固まったら型をバラシます。
砂型の場合は製品の表面に砂がついているので、ショットブラストで綺麗にします。
ショットブラストとは粒状の投射剤を吹き付けるもので、ブラスト加工の一種です。
また、中子は振動を与えることで崩壊させ、製品の中から取り除きます。
型に使用した砂は再利用することができます。
仕上げ
研磨、機械加工、塗装など仕上げを行います。
対応している仕上げの方法は業者によって異なります。
場合によっては仕上げ作業を鋳造を依頼したところとは別の業者に依頼するというケースもあります。
アルミ鋳造で用いられる主な造型法3つ
この章ではアルミ鋳造で用いられる主な造型方法をご紹介します。
生砂型
けい砂や川砂を使用し、ベントナイトなどの粘土を粘結材とします。
安価に製作できる、短い時間で造型できるといったメリットがあります。
一方で、寸法精度は非常に高いわけではないため、寸法を厳しく調整しなければならない場合は別の造型法の方が適しているかもしれません。
シェルモールド
シェルモールド法はドイツ発の造型法です。
高温に熱した金属にけい砂とレジンを混ぜたRCS(レジンコーテッドサンド)に吹きつけて、硬化させて型を作ります。
型は薄く、二枚貝の殻(シェル)のような形になることから「シェルモールド」という名前になっています。
砂型の一種ですが、強度が高く、寸法精度も高いです。
ロストワックス
ロウを使用する造型法です。まず、原型をロウで作り、その周りを砂などで固めます。
その後、ロウを溶かし、空洞ができることで型が完成します。
寸法精度が非常に高いため、機械加工にかかる時間を減らすことができるのがメリットです。
まとめ
アルミ鋳造はアルミニウム合金を用いて行う鋳造のことです。
アルミニウム合金には様々な種類があり、性質も異なるので、用途に合わせて適するものを選ぶ必要があります。
アルミ鋳造についてもぜひ岡崎精機にご相談ください。
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