RoHS・RoHS2指令とは?銅合金への影響を詳しく解説
この記事では次の内容をまとめています。
・RoHS指令とは
・RoHS指令10の物質リスト
・銅合金に与える影響
RoHS指令の基本から銅合金との関わりまで網羅しました。
RoHS指令とは
読み方は「ローズ指令」です。
“Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment”( 電気・電子機器における特定有害物質の使用制限)の一部の頭文字をとって” RoHS”という言葉が付いています。
EUによって定められた特定の有害物質の使用制限に関する指令で、2003年に公布され、2006年に施行されました。
目的は有害物質が人体や環境に対して悪影響を及ぼさないように、製造の段階から使用を制限することにあります。
RoHS指令が守られることで、制限の対象となる電気・電子機器の再利用が容易になりますし、処分や埋立時に環境や人間の健康に影響を及ぼすことを防げます。
RoHS指令が守られていない製品をEU内で販売することはできません。
RoHS指令を守ることは企業が人々や環境に対して配慮していることをアピールすることに繋がります。
RoHS2指令とは
2011年にRoHS指令の改正指令が公布されました。
2011年のこの指令は「RoHS2指令」「改正RoHS2指令」と呼ばれます。
これを受けて、2006年に施行されたものが「RoHS1指令」と呼ばれることもあります。
元々6物質が規制されていましたが、RoHS2指令から4物質が追加され、現在は合計で10物質が規制の対象となっています。
そのほかにも様々な変更を経て現在の形になっています。
RoHS指令のこれまでの歴史
2003年2月13日 RoHS指令(RoHS1)公布
2006年7月1日 RoHS指令(RoHS1)施行
2011年7月1日 改正指令(RoHS2)公布
2013年1月2日 RoHS指令(RoHS1)廃止
2013年1月3日 改正指令(RoHS2)施行
2015年6月4日 改正指令(RoHS2)がさらに改正され、4物質が新たに規制対象に追加され、合計10物質に拡大
2019年7月22日 上記の件が適用される
RoHS指令で規制される10の物質リスト
(規制物質・最大許容濃度の順に表示)
鉛(Pb) 0.1wt%
水銀(Hg) 0.1wt%
カドミウム 0.01wt%
六価クロム(Cr6+) 0.1wt%
ポリ臭化ビフェニル(PBB) 0.1wt%
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) 0.1wt%
フタル酸ジニエチルヘキシル (DEHP) 0.1wt%
フタル酸ブチルベンジル(BBP) 0.1wt%
フタル酸ジブチル(DBP) 0.1wt%
フタル酸ジイソブチル(DIBP) 0.1wt%
初めは鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルの6つのみでしたが、RoHS2で新たにフタル酸ジニエチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチルが追加されました。
RoHS指令の対象製品
現在は以下の11のカテゴリーが対象となっています。
1大型家庭用電気製品
2小型家庭用電気製品
3情報技術・電気通信機器
4消費者用機器
5照明機器
6電気・電子工具
7玩具・レジャー用品・スポーツ器具
8医療関連機器
9監視・制御機器
10自動販売機
11上記に含まれない電気電子機器
RoHS2指令では、それまで除外となっていたカテゴリ8とカテゴリ9が新たに対象となり、さらに、カテゴリ11が追加されました。
RoHS指令で適用除外となる鉛
様々な規制があるRoHS指令ですが、以下のものは適用除外となります。
・鋼材に含まれる0.35wt%までの鉛
・アルミニウムに含まれる0.4wt%までの鉛
・真鍮に含まれる4wt%までの鉛
適用除外の理由は技術的・科学的に代替手段がないためです。
ただし、適用除外は期限付きのため、期限を迎えると再検討の結果、除外対象でなくなることもあります。
過去には六価クロム防食剤も適用除外となっていましたが、代替手段ができたことによって取り下げられました。
RoHS指令が銅合金に与える影響
真鍮(黄銅)は銅と亜鉛の合金で、鉛が添加されることがあります。
鉛は銅と混ぜ合わせることで快削性が増すためです。
真鍮の一種である快削黄銅は鉛を添加して被削性を高めており、切削加工によく使われています。
先ほどもご説明したように「真鍮に含まれる4wt%までの鉛」はRoHS指令で適用除外となっているため、この条件を守っていればEUへ輸出することが可能です。
ただし、適用除外は期限付きのため、除外対象でなくなったときのことを考えて準備を進めておくと安心です。
鉛フリーのシリコン系やビスマス系の真鍮が既に販売されているため、気になる方は今から情報収集を始めましょう。
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RoHS指令が生産者に課す義務
RoHS指令では生産者に次のような義務が課されます。
・まず、CEマーキングを行わなければいけません。
これは改正RoHS指令から課されたものです。
RoHS指令に適合しているかどうかを評価し、適合宣言をして、市場に出す前にCEマークを貼り付ける必要があります。
また、技術文書と適合宣言書の作成も必要で、2つとも10年間保管することが求められます。
・適合を維持するのはもちろんのこと、設計の変更などが生じた場合は変わらず適合した状態を維持する必要があります。
・製品の型式や製造番号、製造者の名称、登録商標名もしくは登録商標と連絡先住所を機器、包装、同梱する文書に貼り付けなければなりません。
・製品が市場に出た後に指令に不適合であることが分かった場合、リコールの措置をとり、加盟国の当局に連絡する必要があります。
RoHS指令の日本への影響
RoHS指令は冒頭でも説明したように、EUによって定められたものです。
そのため、日本国内でのみ販売される製品の場合はRoHS指令に適合していなくても、日本の法律や指令を守っていれば問題ありません。
ただし、EU内へ輸出する場合、日本で製造された製品であってもRoHS指令を守らなければなりません。
もし、指令に適合していない製品を輸出した場合、製品を回収しなければならず、その上、罰金刑が科されることもあります。
そのため、海外への輸出を考えている企業はRoHS指令について知り、適合する製品を製造する仕組みを整える必要があります。
RoHS指令とREACH規制の違い
RoHS指令と似たものにREACH規制があります。
REACHは”Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals” の略で、EUで定められた化学物質に関する規則です。
目的として「人の健康・環境の保護」や「EUの化学産業の競争力の維持向上と革新を強化すること」などが挙げられます。
RoHS指令では電子・電気機器における物質を制限していますが、REACH規制はもっと広い範囲の化学物質を対象としています。
また、名前にもあるようにRegistration(登録)、Evaluation(評価)、Authorisation(認可)、Restriction(制限)に関する義務が課されるのも特徴です。
RoHS指令とWEEE指令の違い
WEEEは”Waste Electrical and Electronic Equipment”の頭文字を取ったもので、RoHS指令と同じく電子・電気機器に関するEUの指令です。
ただし、WEEE指令は電子・電気機器の廃棄に関するもので、電子・電気機器の再利用またはリサイクルを促進し、廃棄物を減らすことを目的としています。
これを達成するため、生産者には再利用しやすい設計をすることなどが求められています。
このようにWEEE指令は製品を使用した後のことを考慮しています。
まとめ
RoHS指令は2006年に施行したEUの指令で、電気・電子機器における特定有害物質の使用を制限しています。
日本国内でのみ製造・販売する場合は関係ありませんが、日本で製造してEU圏内に輸出する場合はRoHS指令に製品を適合させる必要があります。
銅合金に関して「真鍮に含まれる4wt%までの鉛」は適用除外となっていますが、除外期限を過ぎると対象から外れることもあります。
そのため、今のうちから鉛レス素材を使用した真鍮の取り扱いを始めると安心です。
弊社でも鉛レス素材に対応しておりますので、お気軽にお問合せください。
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